№30 「源氏物語 六」(岩波文庫
 「東屋」〜「夢浮橋」。
123冊本その78:「源氏物語」(岩波文庫
 二月の(私的)課題図書だった「源氏物語」を少し遅れてやっと読み終えた。長かった。

 「光源氏は人間としては描かれていない。当時の人が考え得る限りでの最高最上最善の人物として造形されているのが源氏なので、もはやこれは神といっていい」
 と、同僚の思想の先生が仰ってたので、どんなものかなと思いながら読んでいったけれど、うううむ。わからない。その見方を立てた上で読むことがこの物語の魅力をどう引き出すことになるのか、いまのところはわからない。
 
 それにしても、純粋に面白かった。随所に笑いを誘う描写が挟んであるのが意外といえば意外だった。
 そして泣かせるところはきちんと泣かせる。紫上が死ぬ前後ではつい涙が。。。
 紫上が「おばあさまがいなくなったら、思い出してくれますか」と訊いたときの、三宮(後の匂宮)の「そんなことになったら、ぼく機嫌わるくなっちゃうよ」という答えがいかにも幼い子らしくてもう。泣いちゃいそうになるのをごまかしたくてふいっと席を立つところとか、かわいくて仕方ない。
 
 話の作り方が憎たらしいほど上手い。玉鬘を手に入れる鬚黒の大将の性格だとか、源氏に降嫁する女三宮の性格だとか、この役回りによくぞこの人物像を!とただただ恐れ入った。
 
 友人のMさんが、「清少納言は、朝から「おはよーう!」って教室入ってきて、やいやい騒いでクラスの中心になるタイプ。紫式部は部屋の片隅でだまーってクラスメートを観察して心の中で分析してるタイプ」って言ってたけど、実際に読んでみてものすごく納得した。

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 しかし一番の感想は「『あさきゆめみし』(大和和紀講談社コミックス)ってすごいな」ということでした。13巻であれだけエピソードを拾えるのってそれこそ神業だと思います。