2006-01-01から1年間の記事一覧

123冊本また何冊目かわからなくなった:「イリアス」(ホメロス作・松平千秋訳、岩波書店)

トロイ戦争に材をとった一大叙事詩。 巻措くあたわざる、とはいかなかった。敗因は私のカタカナ嫌い。ただでさえ登場人物が多いのに、同じ人物でも呼び名がいくつもあるので途中でわけがわからなくなった。アカイア勢・アルゴス勢・ダナオイ勢、これ三つとも…

123冊本その76だった:「ギリシア・ローマ神話 付インド・北欧神話」(ブルフィンチ作・野上弥生子訳、岩波文庫)

物語を読む楽しさを十分に堪能した。ぎこちなさをまったく感じさせない翻訳文も見事。 古い時代の話はどことなく呑気でいい。自分のしとめた大蛇の呪いで子孫をみな失い国を追われた王の出した結論が、「もし一匹の蛇がこれほどまで神々にとって大事なものな…

123冊本その…いくつだったっけ

「人と人との間―精神病理学的日本論」(木村敏、弘文堂) 日本対西洋、という図式をやたら強調する本というのはちょっと苦手なんだけれども。「気」と「心」の違いを論じたところなどは面白かった。また、「自分」や「気分」の「分」に残る「分け前」の意味…

123冊本その74:吉田兼好「徒然草」(岩波文庫)

作業の終わりかけにいつも「高名の木登り」(109段)とつぶやいてしまうのは私だけだろうか。他にも98・110・127段など、行動の指針となってる段がいくつもある。 全部よくて、全部ダメ。指導教授がこの人の物の見方をこんな風に言い表しておられ…

123冊本その73:野上弥生子「迷路」(岩波文庫)

「戦争で中断しながら20年をかけ、昭和31年完結」した「大長編小説」。長編に大がつくんだからすごい。 「お辞儀した」(転向した)青年の敗北感や政治の中枢部の思惑やら戦争で儲ける商家の気負いやら。「夜明け前」のときも書いたけど、これだけ膨大な…

123冊本その72:「ドストエフスキーの世界観」

ドストエフスキーと真っ向から取っ組み合おうという気概が感じられる良書。特によかったのは「自由」「悪」「大審問官――神人と人神」の章。よかったというのは自分に興味のある問題だったから。 しかしどうしても本文よりも引用しているドストエフスキーの文…

123冊本その71:「縮図」

一週間ほど前に読んだので記憶が……いや、悪くない読後感でしたよ(適当)芸者屋を取り仕切る銀子という女性が主人公。 「……したが、……というのだが、」とやたら「が」を続けて使うのが気になった。この作家の癖なのかしらん。 この小説で漢字を宛ててあるの…

123冊本その70:「新聖書講義」

河上徹太郎という人が、聖書を通じキリスト教精神の何たるかを11項目に分けて説いた本。小林秀雄と親交のあった人らしい。 100頁くらいで読みやすかったが、なんとなく中途半端という印象を受けた。信仰と理智とは対立するもので、信仰は「一かばちかでき…

123冊本その69:「ロダン」

リルケによるロダン論。ロダンロンって変な響き。 その9でリルケ詩集を読んだけれど、このロダンの評論の方がずっとよかった。ロダンの画集(彫刻集?)がほしくてたまらなくなった。 文庫にも、写真が8つ入っていた。「ダナイード」の背中から尻にかけて…

123冊本その68:「若き哲学徒の手記」

昭和16年、気比丸沈没事故により22歳で亡くなった弘津正二の日記。 読んでいる間は、この沈没事故が持つ悲劇性を努めて忘れようとした。かわいそうに、なんて思って読まれても向こうだって困るだろう。日記を書いた時点では事故は起きていないんだし。 …

その67:「芥川龍之介の思想」

本文よりも、ふんだんに引用されている芥川の『株儒の言葉』そのものに惹かれた。 この人は夏目漱石の研究の方で有名らしい。そちらもぜひ読んでみたい。

123冊本その66:「『歎異抄』と現代」

第2章の「『本願選択』の二重性」のところをとりわけ熱心に読んだ。自由という言葉がここ十年ずっとわからなくて迷っていたから。この本はそのことについて深く切り込んでいたのだが、やっぱり腹の底からわかるというというわけにはいかなかった。悲しい。…

滝沢克己二本立て。九大の先生だった方です。西田哲学を戦前で唯一理解した人、とも言われています。公式ページはこちら。 http://www.takizawakatsumi.com/

123冊本その65:「夜明け前」

第一部・第二部合わせて岩波文庫で4冊、総頁数約1600。こんだけ広く深い小説を書くには、よほどの強健な精神を必要とするだろう。感想がまとまらない。メモ程度にいくつか。 ・街道の宿場という場面を設定した時点でこの小説は成功を約束されたようなも…

123冊本その64:「旅愁」

執筆の時期(昭和12〜23年)と、「日本の精神文化と、ヨーロッパの物質文化ないしは知性との相克」(新潮文庫解説より)という主題には切り離せない関係があるのだろう。「東洋対西洋」の単純な二項対立が鼻につく箇所もあったけれど、平成の感覚でそんなこ…

ほぼ十日ぶり。

123冊本その63:「播州平野」

戦争直後の女たちの暮らしを描いたもの。臆病な心から戦争に関する本はなるべく避けて通っていたのだが、これは読んでよかった。決められた本を読むということのよさはこういうところにもある。 登場人物が女ばかりだったし、文章自体も「女」を強く感じさせ…

その62:「風姿花伝」

読み返してみて、わからないところがこんなにあるのに、よく見切り発車で論文書いたなあと思う。「成就」「秘する花」の用例を他の著作からも拾うこと。

その61:「歎異抄」

「たとひ法然聖人にすかされまひらせて、念仏して地獄におちたりとも、さらに後悔すべからずさふらう」とところを読むjといつもしみじみする。こんな出会いを得た人は幸せだ。

その60:「近代秀歌」

秀歌例から定家の評価基準を推し量れないかしらと思ったけれど、そんな曖昧な試みがそう簡単に成功するはずもなかった。

その59:「新古今和歌集」

どちらが好きかと言われればこちら。式子内親王の歌にいいのがいくつもあった。

123冊本その58:「古今和歌集」

季節がら夏の歌が気になる。夏歌34首中実に28首が郭公(ほととぎす)の歌だった。共通の認識がもたらす安らかさということを考える。

123冊本その57:「ドストエフスキーの生活」

小林秀雄の、ドストエフスキーに関する評論集。表題の伝記部分よりも、「『カラマーゾフの兄弟』」「『罪と罰』について」の方を熱心に読んだ。 警句の連続。警句に弱いので参っちゃう。「彼等は、疑うというより寧ろ信じないのである」なんて言われたら、意…

123冊本その56:「罪と罰」

20歳前半において最も衝撃を受けた本。やはり凄かった。 この本を、つまらない、取るに足らぬ本だ、と言ってのける人っているんだろうか。ラスコーリニコフとソーニャの会話を冷笑を以って受け止める人は?いや、勿論いるんだろうけど、私には到底できない…

123冊本その55:「竹沢先生という人」

竹沢先生の語る思想よりもむしろその仕草に心ひかれた。目をまんまるにしたり、足をぶらぶらさせたり。妹の辰子さんもいい。 「熱願冷諦」という言葉を知った。求める時には熱心に願望し、かなわぬ時には冷静にさらりと諦めること。かくありたい。

123冊本その54:「人間の絆」(新潮文庫)

全4巻。とにかく惨めで暗くて、主人公フィリップの卑屈と紙一重の人の善さが厭わしくて、早く終われよかしと念じながら読んだ。 が、最後の数十頁を読んでいて、自分がフィリップのことを好きになっていることに気が付いてちょっと驚いた。3巻半の惨めさが…

123冊本その53:「息子たちと恋人たち」

・世の男たちの皆が皆、母親にこんな恋着を持っているのかと思うと空恐ろしい。 ・母子・恋人・夫婦間の間柄について、「闘争」「争闘」「闘い」という言葉が多用されるのが印象的だった。 ・「彼は、彼女にけがをさせて以来、彼女を憎んだ。」この気持ちは…

イギリス小説二本立て。いや、長かった。

123冊本その52:「暗夜行路」

とてもよかった。文章が。フランス小説の過剰な表現に食傷していたところに、奇を衒わない、素直な表現が心地よく響いた。たとえとも言えないような安直なたとえをいうなら、こってりしたフランス料理の後に茶漬を食べるような……うわ、本当に安直だ。 中学に…

123冊本その51「谷間のゆり」

岩波文庫約450頁分の書簡。というものすごい形式。「こころ」なんて目じゃないという長さ。 しかしここに描かれたヒロインの魅力というものは、書簡という形式でしか書き表せなかったという気もする。純潔の尊さは、拒まれた当の本人によって、怨嗟と賛嘆…