2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

123冊本その55:「竹沢先生という人」

竹沢先生の語る思想よりもむしろその仕草に心ひかれた。目をまんまるにしたり、足をぶらぶらさせたり。妹の辰子さんもいい。 「熱願冷諦」という言葉を知った。求める時には熱心に願望し、かなわぬ時には冷静にさらりと諦めること。かくありたい。

123冊本その54:「人間の絆」(新潮文庫)

全4巻。とにかく惨めで暗くて、主人公フィリップの卑屈と紙一重の人の善さが厭わしくて、早く終われよかしと念じながら読んだ。 が、最後の数十頁を読んでいて、自分がフィリップのことを好きになっていることに気が付いてちょっと驚いた。3巻半の惨めさが…

123冊本その53:「息子たちと恋人たち」

・世の男たちの皆が皆、母親にこんな恋着を持っているのかと思うと空恐ろしい。 ・母子・恋人・夫婦間の間柄について、「闘争」「争闘」「闘い」という言葉が多用されるのが印象的だった。 ・「彼は、彼女にけがをさせて以来、彼女を憎んだ。」この気持ちは…

イギリス小説二本立て。いや、長かった。

123冊本その52:「暗夜行路」

とてもよかった。文章が。フランス小説の過剰な表現に食傷していたところに、奇を衒わない、素直な表現が心地よく響いた。たとえとも言えないような安直なたとえをいうなら、こってりしたフランス料理の後に茶漬を食べるような……うわ、本当に安直だ。 中学に…

123冊本その51「谷間のゆり」

岩波文庫約450頁分の書簡。というものすごい形式。「こころ」なんて目じゃないという長さ。 しかしここに描かれたヒロインの魅力というものは、書簡という形式でしか書き表せなかったという気もする。純潔の尊さは、拒まれた当の本人によって、怨嗟と賛嘆…

123冊本その50:「赤と黒」

二人の女性と主人公とのそれぞれの恋の在り方に興味を持った。 心理描写の細やかさは特筆に価する。ちょっとしたことで相手に夢中になったり幻滅したりする、恋愛の滑稽とさえいえる心模様が実に上手く捉えられていた。 この時代の人のナポレオンへの思い入…

123冊本その49:「ボヴァリー夫人」

フランスの作家というのはどうしてまあ誰も彼も冷徹なんだろうか。 不倫をためらう虚栄心だとか内心の熱が冷めるほど激しくなる振舞いだとか場当たり的な信仰心だとか、一つ一つの心理描写はさもありなんと思わせるのに、全体的に見るとエマ(ボヴァリー夫人…

123冊本その48:「武器よさらば」

岩波文庫で読んだ。1957年初版発行だから女性の言葉遣いなど、言い回しが少し古びていて、それが自分にはよかった。でも新潮社版も気になる。 これにもたくさんの死が描かれていていてナーバスの極みに達してしまった。しまった今日は本の選択がまずかった。…

「ノルウェイの森」

村上春樹の作品には、フォークナーの名前が何度か出てくるらしい。そのことは下のサイトで知った。 http://kin-saru.cocolog-nifty.com/totugekitai/2005/11/post_e85c.html これによると、『納屋を焼く』はフォークナーのその名も『Barn Burning』を意識し…

123冊本その47:「サンクチュアリ」

フォークナーによる〈ヨクナパトーファ譚〉の中の一冊。 参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%91%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A1%E9%83%A1 この題名には皮肉が込められている、のだろうか。殺人や強姦といった世の…

その46:「田舎教師」

「理想が現実に触れて次第に崩れて行く一種のさびしさと侘しさ」(本文より)を淡々とした描写によって浮かび上がらせている作品。なのだろうか。 文体が性に合わないのか、読むのに随分苦労した。雨の中、両肩がじっとり濡れるのを我慢して歩くような。 題…

123冊本その45:「婦系図」

すごい。最後まで読んで茫然自失。いい意味であらすじが書けない。 話の展開もすごいけど、文章は洒落てるし、笑いもバッチリあるし、何より女性が魅力的なのがいい!結局自分はいい女が出てきたら褒めてるんじゃないかと心づいた。漱石然り一葉然り。 作品…