123冊本その3:「教祖様」 

 『教祖様』は天理教の教祖・中山みきの一生を描いた作品。そんな話だとは知らなかったのでびっくりした。
 すごい女性がいたものだ。何がすごいといって、「貧に落ちきり」、人々に自分のものを与えつくすところ。真の奇跡とは病気を一瞬にして治癒することではなく、人の心の「建て直し」をすることだ、という部分にはしみじみ共感できた。
 しかし、みきの心根を尊いと思いつつも、夫や子供の、とくに息子善右衛門の苦悶する姿に同情せずにはいられなかった。神の声を直接聴くことのないまま、「神の社」となった女性の家族として暮らすつらさは想像を絶するものがある。こういう感想を持つこと自体、自分が信なきものであることを顕にしているようなものだけれど。
 何度も「ナザレのイエス」をみきと比較するところが気になるといえば気になった。類似点を挙げたくなる気持ちはわかるけれど、聖書の理解に首をかしげたくなるような箇所もあり、むしろ天理教一本で書いた方がよかったのではと思われた。