その27:「五重塔」

 今日はどうも調子が悪いなと思ったら、三冊目で大当たり。
 「文豪」という言葉の意味を噛み締めた。上手い小説家はこれからも出てくるだろう。しかし「豪」の者と呼ばれる小説家は、果たして。
 十兵衛と対立する源太を、あのような気風のいい男に描いたのが見事だと思った。気働きのいい、人情に厚い、申し分のない男。しかしそれだけでは、否恐らくはそれだから駄目なのだ。
 「端然と」に「しゃん(と)」、「合点ぬ」に「のみこめ(ぬ)」とルビを振るこの文字遣い、露伴がやったらうっとりするのに今の作家がやったら気障だと思う、そんな自分はとても根性が曲がっているなあと思いました。