123冊本その76だった:「ギリシア・ローマ神話 付インド・北欧神話」(ブルフィンチ作・野上弥生子訳、岩波文庫)

 物語を読む楽しさを十分に堪能した。ぎこちなさをまったく感じさせない翻訳文も見事。
 古い時代の話はどことなく呑気でいい。自分のしとめた大蛇の呪いで子孫をみな失い国を追われた王の出した結論が、「もし一匹の蛇がこれほどまで神々にとって大事なものなら、わしも蛇になりたい」。で、夫婦揃って蛇になるという。筋が通ってるんだか通ってないんだかわからない。
 しかし本筋と関係ないところで私の心を打ち抜いたもの、それはこの本の序文!夏目漱石が序を寄せているのだ。出だしだけ紹介すると、
 「私はあなたが家事の暇を偸(ぬす)んで『伝説の時代』をとうとう仕舞迄訳し上げた忍耐と努力に少からず感服して居ります。書物になつて出ると余程の頁数になるさうですが、嘸骨の折れた事でせう」
 や、八重子めーーー!うらやましすぎる。でもこんだけ巧く訳してるんだから仕方ないか。ちぇっちぇっ。