№43 高橋睦郎「読みなおし日本文学史」(岩波新著)
№44 保坂和志「生きる歓び」(新潮文庫
 保坂和志の作品を初めて読んだ。
・なんだかどしどしものを言うなあ、色気ないなあと思いながら読んでいたけれど、「大げさに聞こえるとは思うが、自分のことを何もせずに誰かのことだけをするというのは、実は一番充実する」「そう書くと私が常時それを望んでいると誤解する人が必ずいるけれど、望んでいるわけではない。そんな時間はできれば送りたくはない。逃げられないから引き受けるのだ」(30・31頁)あたりから身を入れて読み出した。
・「バカだねおまえ、小島信夫っていうのは、田中小実昌とか後藤秋生みたいな、ダラダラ書く作家の総本山みたいな作家なんだよ」(「小実昌さんのこと」108頁)メモ。この辺りの作家同士の関係にもう少し詳しくなりたい。
岡本太郎の講演が「何か、質問はありませんか」ではじまった、というところが妙にツボにはまって、ブフーと音を出して笑ってしまった。電車内で読んでいたので正面の男性がびっくりしていた。
田中小実昌が「見る人」「見てばかりいる人」だったという件りを読んでうらやましいなと思った。「私は」「私が」「私を」から少し離れたい。
・あとがきで、大事な人の一人に大島弓子を挙げていたのがなんとなしうれしかった。別にファンというわけではないのになんでかな。最近人から「グーグーだって猫である」を借りて読んだからかもしれない。