その46:「田舎教師」

 「理想が現実に触れて次第に崩れて行く一種のさびしさと侘しさ」(本文より)を淡々とした描写によって浮かび上がらせている作品。なのだろうか。
 文体が性に合わないのか、読むのに随分苦労した。雨の中、両肩がじっとり濡れるのを我慢して歩くような。
 題名と、自然主義というものへの偏見から、さぞ校長や村長にいびり倒されるのだろうと思っていたら、案に相違して周囲の人々は皆好人物だった。特に荻生さんがよい。こんなにいい人に囲まれていながら、自分の思い一つで沈み込んでゆく清三が歯痒かった。同族嫌悪かもしれない。
 どうでもいい話だけれど、ビールに砂糖を入れて飲む場面があったのでへえーと思った。今度試してみよう。