123冊本その47:「サンクチュアリ」

 フォークナーによる〈ヨクナパトーファ譚〉の中の一冊。
 参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%91%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A1%E9%83%A1

 この題名には皮肉が込められている、のだろうか。殺人や強姦といった世の悲惨をこれでもかというくらいに書き連ねていった作品。作者自身、序言で「金がほしいという考えから」「自分の想像しうる限りの最も恐ろしい物語」を書いた、と明言しているらしい(らしいというのは翻訳版にその序言はないから)。
 だが読後は案外さっぱりしたものだった。無実の罪を着せられた男の弁護を無報酬で引き受けるホレス、そして男の妻ルービーの、「敗けてもくじけない」姿が丹念に描かれていたからかもしれない。下手に大団円を迎えるよりもずっとよかった。
 重要な登場人物である「テンプル」という名の娘、これは「神殿」のTempleを意味しているのかなあ。

 123冊本ではないけれど、アゴダ・クリストフの『悪童日記』を読んだ。最後がすごいと聞いていたけど本当だった。 
 『サンクチュアリ』と『悪童日記』の、世の悲惨さへの向き合い方の違いなどを考えた。前者はやっぱりアメリカ的なのだろうか。そんな括り方は安易すぎるのか?要再考。