123冊本その49:「ボヴァリー夫人」

 フランスの作家というのはどうしてまあ誰も彼も冷徹なんだろうか。
 不倫をためらう虚栄心だとか内心の熱が冷めるほど激しくなる振舞いだとか場当たり的な信仰心だとか、一つ一つの心理描写はさもありなんと思わせるのに、全体的に見るとエマ(ボヴァリー夫人)が全然血の通った人間らしくないのが面白かった。リアリズムとか写実主義についてもっと詳しく知りたい。
 能と少し似てるなとなぜか思った。思いつきだけだけど一応メモ。

 
それよりなにより、アゴダ・クリストフの三部作『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』はすごい!90年代に日本でブームになったというけど知らなかった。
 作者に嫉妬心を覚えるほどだった。このプロットを思いついて、この文体でこの物語を書き切ったのが私だったらよかったのに。