123冊本その50:「赤と黒」

 二人の女性と主人公とのそれぞれの恋の在り方に興味を持った。
 心理描写の細やかさは特筆に価する。ちょっとしたことで相手に夢中になったり幻滅したりする、恋愛の滑稽とさえいえる心模様が実に上手く捉えられていた。
 この時代の人のナポレオンへの思い入れには驚かされる。キェルケゴールもこの人物についてかなりの頁を割いて言及していたような。
 「自分の部屋に帰ると、ジュリアンはひざまずいて、コラゾフ公爵にもらった恋文に接吻をあびせたというようなことまで私がもらしてしまっていいものだろうか」
 みたいな調子で、時々作者が作中に出てくるのだけど、これはどういう効果を狙ったものなんだろうか。