№49 ドストエフスキー「白夜」(新潮文庫
№50 古井由吉「白髪の唄」(新潮文庫
 2週間ほど前、かっぱ横丁で見つけて欣喜雀躍した一冊。
 死の香りを馥郁と漂わせる文章は相変わらずで、どの箇所が特にいいというのではなく、文の運びにただただ心地よく身を任せた。現代の作家でそういう読み方ができるのは古井由吉だけなので、もう「一気に読んでふっつり思い切ろう」なんてケチな了見は起こさず、大事に読んでいきたいと思う。
 しかし空襲・旅客機墜落・震災・地下鉄サリン事件と、天災人災を多く扱った作品を取り上げて「馥郁と」なんて言うのは無感覚無神経の極みかもしれない。
・「『正しい……』と私は聞き返した。この言葉にたいする拒絶の反応の習性に過ぎなかった」(169頁)
・「済んだ」という感覚。
・「槿」と同様女の名が鳥塚と姓で表されていた。今度は下の名を明かすことさえしなかった。しかも作者自身そのことに触れているので(山越が彼女の名を下で呼ばないことに不審の念を漏らす)、姓で表記することの意味もしくは効果についてしばらく考えた。しかしわからない。

 誓います。これから夏休みまで研究に関わる本以外は読みません。勉強しなさすぎ。