その31:「一握の砂」
三行分ち書きというスタイルもあずかって、驚きの読みやすさ。
自己愛が徹底していて清清しいほど。なんせ巻頭に来るのが「我を愛する歌」。しかも、啄木の人となりを知る金田一京助によれば、「歌集『一握の砂』全体が、あるいは「我を愛する歌」と題されてもよかったくらい」。
つくづく、教科書にはおとなしい歌しか採らないんだなあと思った。
「愛犬の耳斬りてみぬ
あはれこれも
物に倦みたる心にかあらむ」
最低!この人でなし!といいながらすごい勢いで読んでしまう。ダメぶりに共感してしまうという点では太宰に近いのかしら。でも絶対、こっちの方が性格悪い。間違いない。